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ブログ, 日本語をたのしむ

2016 - 06 - 02

よろづの言の葉

私が日本人に生まれて良かったと感じているのは、治安や食べ物やそういうことだけでなく「日本語」自体に惹かれているからかもしれません。
”やまとうたは 人の心を種として 万(よろづ)の言の葉(ことのは)とぞなれりける”

 

私が日本人に生まれて良かったと感じるのは、

治安が良いとか、物に困らないとか・・・

そういう理由だけではない気がしています。

 

 

 

「先生はなぜ、国語の先生になることを選んだの?」

 

そう生徒に訊かれて、話したことがあります。

 

 

 

1つめの理由は、たまたま私が入った大学が教育大学だったこと。

2つめの理由は、たまたま入った専攻のコースが国文学を主としていたこと。

3つめの理由は、せっかくだから教員免許を取ろうと思ったこと。

 

 

最初は国語の教員免許が欲しかったわけではなくて、

外国人に日本語を教える「日本語教師」になりたかったこと。

 

でも、自分に語学力がなかったのであきらめたこと。

 

日本語教師をあきらめた一番の大きな理由は、

この日本文化の良さを伝えることは私の能力ではできないことを自覚したから。

 

 

たとえば、「おしとやか」「きらびやか」という言葉。

古くから親しまれてきた「やまと言葉」。

日本語の中でも、私が美しい響きだと感じる「やまと言葉」。

 

しかしながら、日本語を母語としていない外国人に、

その「やまと言葉」の美しい響きが奏でる情景を

伝えることは、私には到底不可能だと感じた。

 

 

「おしとやかな人」は、物静かな人という表現だけでは言葉が足りない。

「きらびやか」は、単なる派手とは異なる。

 

でも、あなたたち(中学生)となら、

同じ国土で、同じ風習で、同じ自然環境で、

同じような感覚を持っているので、

私にも少しは伝えることができるかもしれない。

 

 

だから、日本語を母語話者としているあなたたちに

日本語の良さを伝えていけたらいいな、と思った。

 

と。

 

 


 

 

 

やまとうたは

人の心を種として

万(よろづ)の言の葉(ことのは)とぞなれりける

 

 

 

 

力をも入れずして天地(あめつち)を動かし

目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ

男女のなかをもやはらげ

猛(たけ)き武士(もののふ)の心をも慰むるは、歌なり

 

紀貫之